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地球飛行士からの手紙

音楽に関するブログです。

21年目へ!BUMP OF CHICKENが「本当にすごい」3つの理由(仮)

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はじめに~タイトルに「(仮)」をつけている理由

ええと、うん。まずね。記事タイトルに「カッコカリ」を付けたことには理由があるんだ。というのも、この記事の内容は筆者がずっと書きたかった内容で……。何しろバンプって、実は日本音楽界においてすっごい影響力と立ち位置にいるミュージシャンのはずなのに、私たちはどこかまだ彼らを「総括」できていない。音楽ライターがその都度だらだらインタビューを書き流しているだけで、バンプが現れたことで、この日本に起きた影響って何なんだろうか」「バンプが未だに特別扱いされる理由は何だろうか」ということをしっかり考察している記事が、まだないような気がしていたのだ。

けれど私はいわゆる「信者」なのだ。さらに言うと、中の人はアラサーではあるけど初期のバンプにリアルタイムで触れてはいない人で、その頃の時代の空気については、後から調べたり、読んだり、辿ったりでしか見聞きしていない。なので、これから書いてある記事に誤解があったり、思い込みがあったり、見落としがあったり、間違いがあったりするのでは……と思っているのです。自信満々でこの記事を発表出来ない理由はそこにあるんだ。なので、特に10代・20代前半ファンの方は、この記事については楽しんでほしいと思いつつも、すぐ鵜呑みにはして欲しくない気持ちも、ちょっとあるんだ。

でも、誤りばかり恐れていては、いつまでも何も発表ができない。そこで長らく書きためていたこの記事を、「(仮)」をつけた暫定稿として発表して、皆さんからのツッコミを待とうと思ったのです。なので今回の記事については、特にコメント欄からのツッコミや、賛同や、証言をお待ちしています。もちろん全部読んで反映させようとしたら気が狂ってしまうので、そこは恣意的に切り落とすことはあるかもしれないけれど、是非ご協力願いたいのでございます。

では、お届けします。今年2月11日で「20周年イヤー」が終わる、デビュー以来ほぼノンストップで走り続けてきたバンド、バンプ・オブ・チキン。彼らが本当にすごいと言われる理由。その中でも、特に「斬新だった」「革新的だった」3つのポイントについて。そして、その背景について。


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【要約】BUMP OF CHICKENのどこが「伝説」なのか?

  • 天体観測」をヒットさせ、日本に「歌」主体のギターロックを取り戻した

  • ロック音楽の歌詞に「物語」を取り入れ、現在のボカロカルチャーの基礎を作った

  • プロモーションにインターネットを活用し、その最初の成功例となった


BUMPは、日本に「歌」主体のギターロックを取り戻した!

天体観測

2001年3月14日、BUMP OF CHICKENはセカンドシングル天体観測をリリース。大阪のラジオ局の猛プッシュなどもあり、徐々に口コミで火が点き、最終的には50万枚超の大ヒット。バンドは社会現象を巻き起こしました。

BUMP OF CHICKENはなぜ「本当に凄い」のか?なぜバンプは「特別」な扱いをされるのか?

バンプがいなければ起きてない未来は、実はたくさんあります。その中でも世間に与えた一番のインパクトは、これだと断言できます。バンプは「天体観測」のヒットによって、日本に「歌を聴かせる」ロックミュージックを復活させたのです。

……そもそも「天体観測」がヒットしたのは、一体どのような時代だったのでしょうか?

90年代中盤、ロックミュージックの中心はMr.Childrenスピッツウルフルズなどのロックバンドでした。そして彼らの勢いがやや陰りをみせた97年から、日本のCD売上はピークを迎えます。GLAYL’Arc〜en〜Cielといった、いわゆるヴィジュアル系のロックバンドが大ブームとなり、爆発的なセールスを記録したのです。一方で同時代、インディーズではHi-STANDARDなどのパンク・ロックTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのようなガレージロックが流行していました。

これら90年代末期に活躍したロックバンドには、実は大きな共通点があります。これらはいずれも「歌よりはリズム」重視で、歌詞をしっかり聴かせるタイプの音楽ではなかったのです。ひとつ付け加えれば、どのバンドも「歌詞がつまらなかった」わけでは決してありません。けれどどちらかといえば、歌詞の世界をしっかり届けるというよりも、音楽のグルーヴやリズム、肉体的なバンドサウンド……つまり演奏やパフォーマンスそのものを、より重要視していました。かつてMr.Childrenスピッツが歌っていたような、日常から生まれる平易な言葉とセンスは、インディーズからも、ヒット・チャートからも失われていたのです。

そんな中、ほうき星のように現れた「天体観測」はーー歌詞がよく聴こえる、そして商業的な匂いからも縁遠い、「普段着」の若者が歌い上げた久々の「叙情的」な楽曲でした。気づけばヒット・チャートから長年消えていたーーMr.Childrenスピッツに連なるような、そして紛れもなく新時代を感じさせる「歌を聴かせる」ロック・ミュージックが、「天体観測」によってこの国に戻って来たのです。タイアップもない、無名の22歳の若者たちのよるささやかなロックバンドの会心のヒットは、世間に世代交代を強く印象付けました。ですから当時のメディアは「天体観測」のヒットを、「王道ギターロックの復活」と表現して報じていたのです*1

天体観測」のヒットから2年後、パンク・ロックの流れを組みながらも「歌」と「歌詞」、そして「インディーズ性」の流れを見事に汲んだMONGOL800が記録的ヒットを飛ばしたことで、この新しいジャパン・ロックの流れは確立します。その後のASIAN KUNG-FU GENERATIONレミオロメンELLEGARDEN、そしてRADWIMPS……の活躍は、すべてBUMPのヒットがその先陣となったのです。BUMPがいなければ、KANA-BOONも、キュウソネコカミも、そもそも現在のロックカルチャーすらも……この国にはなかった「かも」しれないのです


バンプは、ロック音楽の歌詞に「物語」を取り入れ、現在のボカロカルチャーの基礎を作った!

THE LIVING DEAD

BUMP OF CHICKENのメンバーが多感な時期を過ごした90年代中盤は、若者のカルチャーサブカルチャーに大きな変化があった時代でもありました。

下北沢時代、そして「ガラスのブルース」を生んだFLAME VEINは素晴らしいアルバムですが、BUMP OF CHICKENが現在のBUMP OF CHICKENになったのは、ある意味、その次の(2枚目の)アルバム『THE LIVING DEAD』からです。このアルバムはすごく特異な作品です。収録されている全10曲が、まるで短編小説のような物語になっていたのです

1曲目「Opening」の歌詞は、さながら登場人物のセリフのように書かれており、彼から「いくつかの物語」をプレゼントしてもらった、というテイでそれぞれのアルバム曲が展開します。ある収録曲の登場人物が、別の曲にも登場します。ふたりの男女のやりとりが、まるでセリフのように交互に歌われます。黒い猫が主人公——という絵本のような世界観で、とても残酷な物語が展開します。

この斬新な*2構成、そして描かれていた情熱的な物語が、あの当時の思春期の若者たちを魅了していったのです。

藤原は、なぜこのような曲が書けたのでしょうか

藤原は当時のインタビューで、影響を受けた音楽は何だ、という質問にドラクエ(『ドラゴンクエスト』)のサントラ」と答えています。アルバム2曲目の由来となった「グングニル」は、ファイナルファンタジー』に登場する召喚獣の武器から着想を得たそうです。ちょうどメンバーは小学生の頃にスーパーファミコン、高校生の頃にプレイステーションの発売を迎えています。メンバーが10代を過ごしたのは、正にテレビゲームの黄金時代……特に『ファイナルファンタジー7』のような、ドラマ性の色濃いRPGが大ヒットしていた頃でした。もちろん藤原たちも、大いにこれで遊んでいたといいます。

また1994年〜95年ごろは週刊少年ジャンプの全盛期。雑誌発行部数の世界記録である653万部は、実はこの頃に記録しています。メンバーはデビュー後も毎週購読を欠かさなかったというほどの『ジャンプ』ファンで、2003年にバンドの成功を決定づけた『ONE PIECE』劇場版の主題歌(「sailing day」という曲です)オファーも受諾しています。また96年には、その後の日本のサブカルチャーを塗り替えることになるテレビアニメ新世紀エヴァンゲリオンが放送開始。特に藤原がこれに強く影響を受けたようで、ヒロインの綾波レイと結婚したいあまりに(笑)「アルエ」という名曲を執筆(ベスト盤でも聴けるよ!)、そして10年後には『エヴァ』のリバイバルにインスパイアされ、幼い日を回想するようなR.I.P.というシングル曲も書いているほどです。

つまり藤原が一番多感だった頃、周りには、こういった「若者」が熱狂する「物語」のようなものがゴロゴロしていたのです。サブカルを音楽性に取り入れたバンドは数あれど、それを完全に自分のものにした上で特有の「匂い」を引き剥がし、そして21世紀の若者の音楽としてそれを昇華させたのは、間違いなく藤原基央が先駆者でしょう

音楽にサブカル的な「物語」を導入し、時にはキャラクターのセリフのように、ロック音楽としてストーリーを歌い上げる――。これは、現在のVOCALOIDニコニコ動画的カルチャーの基礎中の基礎にあたります。音楽ライターの鹿野淳はある雑誌の中で、BUMP OF CHICKENが居なければ今のVOCALOIDカルチャーはここまで成長しなかった」と断言していますが、これは私も同意します。ボカロP出身である米津玄師については語るまでもなく、supercell君の知らない物語が「天体観測」の直接的影響を感じさせるように、HoneyWorks「ロクベル」で「K」を翻案し、そしてホーリーフラッグ」という大名曲で直接的かつ感動的にバンプリスペクトを捧げているように……様々なボカロ楽曲から、その影響がそこかしこに見られます(もちろん、全部ではないですよ!)。ですから、初音ミクがクリプトン社史上初となる公式コラボレーションの相手としてBUMP OF CHICKENを選んだのは、正に必然だったと言えるのです

THE LIVING DEAD』は、90年代カルチャーを飲み込みながらも現在に連なる「物語音楽」の礎となった名盤であり、その最初の成功例でもあり、また「VOCALOID」カルチャーの産みの親といえる、正に「歴史の証人」と呼べる存在なのです


BUMPは、プロモーションにインターネットを活用し、その最初の成功例となった!

FLAME VEIN

BUMP OF CHICKENは、最初のブレイク時、地上波テレビにはまったく出演しませんでした。特に、音楽番組で演奏する、ということはまったく行いませんでした。ミュージックステーションの初出演がブレイクから15年経過した2014年、紅白歌合戦出場が2015年だったことを考えれば、非常に長い間、彼らは地上波テレビから背を向けていたことになります。これは、いわゆる「バンプ的」ロックバンドに共通する(共通していた)、非常に大きな特徴でもあります。

とはいえ、テレビ番組に出ないのも、雑誌中心に露出するやり方も、特にバンプが初めてというわけではありません。しかし、そこに「インターネット」を取り入れ、それを積極的に活用したのは、間違いなくバンプがその最初の成功例なのです

日本の一般家庭に「インターネット」が登場したのは1998年ごろ。1999年には人口普及率21.4%、翌2000年には37.1%に達しています。ADSLiモード2ちゃんねるが登場し、GoogleAmazonが日本でサービスを開始させたのも、この頃です。バンプがCDデビューした時代、インターネットは日本の家庭に急速に普及してゆく、正に過渡期だったのです(そうそう、前述の「グングニル」というタイトルを曲名につけたとき、藤原は実母にお願いして、当時まだ普及し始めたばかりだったインターネットを使い「グングニル」の意味を調べてもらったとか)。

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Internet Archiveから引用。クリックすると引用元にジャンプします。2000年ごろのBUMP OF CHICKENのオフィシャル・ウェブサイト。

そんな時代、黎明期から作られていたBUMP OF CHICKENの公式サイトは「手作り感」に溢れていました。メンバーの絵や文字がふんだんに使われたデザイン、ユニークな言葉でトリビアも交えながら綴られていた年表欄、メンバー同士でやり取りされた交換日記のコーナー(イラストもそのまま掲載されていました)、そしてファンが自由に書き込める掲示板(あったんだよ!)。リニューアル後にはマネージャーの高橋ひろあきさんが記す「TAKAHASHI DIARY」が連載され、メンバーの素の姿をここでも楽しむことができました

またインターネット上の露出にも非常に積極的でしたバンプ初期のライブは、当時としては珍しくネット生中継が試みられていたことを皮切りに、まだ新しいメディアだった「音楽情報サイト」でのインタビュー掲載(エキサイトミュージック、バークス等)、そして当時のエキサイトミュージックが連載を代行した全国ツアーブログ、そしてポンツカのネット配信……などなど、インターネットを使ったプロモーションを積極的に展開しました。かつて雑誌を購入しなければ手に入らなかったインタビューや、(radikoもないので)千葉まで行かないと聴けなかったレギュラーラジオ番組などが、インターネットから全て無料で楽しむことが出来たのです。お金のない10代・20代が、こうして浴びるように「バンプの情報」を手に入れることが出来たことは、どれだけ大きかったことでしょうか

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Internet Archiveから引用。クリックすると引用元にジャンプします。BUMP OF CHICKENのファンサイトでは当時最大規模を誇った「vivid sky」(現在は閉鎖)。

そしてファンもまた、触発されたようにBUMP OF CHICKENのファンサイトを林立させていました。携帯電話からも簡単なウェブサイトが作れるようになっていた当時、様々な年齢層・立場のファンたちがバンプのサイトを競うように作っていたのです。当時のバンプには、「情報交換」するにはもってこいの要素で溢れていました。まずは何と言っても「隠しトラック」——ほぼ全てのCDに隠しトラックを入れるバンドは、後にも先にも間違いなく彼らだけーー情報。このシングルではこの曲が聞ける、プリギャップ(今は滅びてしまった、CDを巻き戻すと現れる特殊な隠しトラック)はこうして聞く……といった情報は、特にファンになりたての人々にとっては嬉しくて仕方がない情報でした。そして「ニケ」「ホッセ」「ポキールなどといった、あまりにも特殊なバンドの「用語解説」! メンバー4人の中だけで広がっていた「マイブーム」な言葉たちが、一方でバンドのパブリックな活動においても露出していた時代でした。よくわからない言葉は、「さらに詳しいバンプファンに聞」けばいい。そういうとき、ファンサイトによく存在していた「用語解説」は、本当に楽しい読み物コンテンツのひとつとして機能していたのです。

そして、何よりも「掲示板」カルチャーです。露出が少ない彼らの情報を共有し、ライブレポをやり取りし、(ファンクラブが無いこのバンドにおいては死活問題である)チケット先行情報を手に入れ、さらにバンプに「よく似た」バンドも調べ尽くす……。あげくには歌詞を読み解く掲示板、果ては自作の詩を投稿する掲示板までもが(ギャー!)そこかしこに建てられていました。ファンサイトにあった掲示板は、バンプの、そして当時のロックバンド情報を、そして思春期の創造をもやり取りする、最もホットな場所だったのです。

これは記録が残っていない筆者の「実感」なのですが、2003年当時、インターネットで隆盛を極めていたファンサイトって、だいたいミスチルか、スピッツか、バンプだったように思います。その中で言えば、バンプは圧倒的に若い存在でしたこれは非常に際立っていたと思います

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もうひとつあります。2002年から2004年ごろにかけて、インターネットでは「FLASH」アニメーションが大流行していました

FLASHアニメーションは、まだ回線が脆弱な当時のインターネットにおいて、軽量なサイズで(当時としては)高音質なmp3音源とアニメーションを同時に再生することができる、マルチメディアに特化した最先端の技術でした。まだ文字や、画像すらも少々ロードに手間取っていた時代に、動きがあるアニメーションを……しかも音付きで楽しめたことは、正に衝撃といってよいほどの革命だったのです。これを作ることもまた簡単だったことから、様々なアマチュア・アーティストが、BUMP OF CHICKENの音楽を使って自分の「アニメーション」を発表しました物語カラーが強く、誰もが映像を思い浮かべることができる音楽……彼らの当時としては「特殊な」楽曲性が、ここでも強みを発揮したのです。一度インターネットにアップしてしまえば、誰でも簡単にダウンロードしたり、転載して自分の「FLASH倉庫」に再アップすることも出来ました。そうしてまた無限に広がり、「私もこの音楽にアニメをつけてみたい」と思わせる……誰もが絵をつけたくなる、アニメーションをつけたくなる音楽、それがバンプだったのです

このことは、少々「正の歴史」として取り上げるには躊躇してしまう部分があります。いうまでもなく、CD音源のやり取りは当時でも違法なことでした。けれどこのルートでもまた、ましてやロックファンではない(重要!)、出てきたばかりのインターネットを凄まじい好奇心で泳いでいた少年・少女たちに、BUMP OF CHICKENの音楽へ触れる機会を与えたのです。彼らはやがてファンに成長し、テレビにも出ないのに20代以上へ圧倒的な知名度を(未だに)広げ、そしてちょっとファンを卒業した今でも、どこか不思議な親近感を感じさせるのは、このころのバンプのイメージがあることは紛れも無い事実でしょう。インタビューなどのコンテンツだけでなく、彼らの音楽そのものすらも、インターネットでは「無料で」聴くことができた……シングル曲はYouTubeに丸々無料でアップする、今の音楽業界のプロモーションを、バンプは(皮肉にも)10年以上先取りしていたわけです

BUMP OF CHICKEN 結成20周年記念Special Live 「20」 (通常盤)[Blu-ray]

単に「テレビに出ない」だけでなく、新しいメディアだったインターネットを遊び心と共に有効活用した。そして彼らが想像もしなかった展開すら楽しみ、時代も味方していった……。バンプ・オブ・チキンは、まさに初期インターネット時代が生んだ、その申し子と言える存在なのです


……ツッコミ、賛同、証言、お待ちしています!(20周年ライブのブルーレイ、おすすめ!)

*1:当時のスポーツ報知など

*2:もちろん「物語」を歌うことは有史以来、音楽の非常に基本的な要素でした。しかし後述の通り、「90年代的」な、つまりマンガやアニメやゲームに触れる世代により親しみやすく歌詞を書いたことは、十分斬新だったと言えるでしょう。

バンプ“歌い出し選手権”を開催します。

 

ヒロHB(一日遅れ)。さて、日産公演のBDも出ましたし、やっと『アンサー』も配信リリースされたし、ということで皆さんいかがお過ごしでしょうか? 最後の記事がもう3か月前ですが、そういうブログなので何卒ご容赦頂ければ幸いです。

今月4日に放送された地上波番組『関ジャム 完全燃SHOW』で、あの槇原敬之が「素晴らしい歌詞だ」とBUMP OF CHICKEN「友達の唄」を紹介し、iTunesランキングで「友達の唄」が一時総合ランキング20位まで跳ね上がる大反響を巻き起こしました。マッキーは、特に歌い出しの歌詞を褒めちぎっていました。ここですね。

<あなたが大きくなるまでに 雨の日なんて何度もある
その中の一度は一緒に濡れた事 忘れちゃうかな>

……藤原の歌詞の特徴は、実はよく練られた歌い出しにもあります。曲の世界観に引き込み、リスナーとの距離をつめ、のっけからインパクトで刺しにかかってくる――今回は、そんなバンプの印象的な“歌い出し”を集めてみました。というか羅列しましたので、どうぞ最後までお楽しみください。


個人的に特に好きな歌い出し・5選

まずはワタシ的ベスト・オブ・歌い出し、トップ5から。

<そしてその身をどうするんだ>

何をどう受けて“そして”なんだよ!そしてにかかっている言葉がないよ! この、ぶった切られるように始まる歌詞が、さながら物語の途中からいきなり始まるようなドラマチックさを演出しているのです。

<目を閉じたその中に 見えた 微かな眩しさを
掴み取ろうとした 愚かなドリーマー>

ノリノリで始まるこの曲の、最初のフレーズが、まず、「目を閉じた」。ご機嫌なイントロにしては、ちょっと暗い言葉だなぁ、と思わせられます。それが実はこの曲の本質そのものにもなっているのです。<目を閉じた>中の世界、は、キャリアを通じてよく描かれるモチーフですが、こんなにもその「愚か」さを一瞬で言い切ってるのは、後にも先にもこれだけかな。

<自分にひとつウソをついた 「まだ頑張れる」ってウソをついた
ところがウソは本当になった 「まだ頑張れる」って唄ってた
ずっとそうやって ここまで来た BUMP OF CHICKEN

ある意味、この1センテンスだけで2曲目の「ガラスのブルース」になっている

<簡単な事なのに どうして言えないんだろう
言えない事なのに どうして伝わるんだろう>

藤原基央というソングライターが、作詞家としての、ある種の頂点に到達したときの名・歌い出し。奇しくも小田和正がテレビ番組でカヴァーしたことから、「ああそうか、これは小田和正的な成熟だ!」と世間に知らしめた1曲です。藤原がこれを作詞したときは……ガラケーのメモ機能に、この曲の歌詞を少しづつメモしていったとか。唄の歌詞は、必ずしも字面そのものに力がある必要はないと個人的には思っていますが(唄であればいいからね)、この2行については、文字として睨みながら書いたその経緯があるからか、活字としての詩のパワーの強さをまざまざと見せつけられる好例だと思います。

 <あんなに夢中で追いかけたのが 嘘みたいだけど本当の今
大切にしてきたけど 実はただ そう思い込んでいただけ>

いきなりリスナーに殴りかかって来る藤原のファイト・スタイルを象徴するような歌い出し。的確かつ正確に、容赦なく相手の急所を狙ってくる。出会い頭の一突き! ウッ、バタン、気絶。そうして相手が弱ったところで、あんな歌詞に繋げるのだから、本当に手段を選ばないバンドだなと思います。


たった1行で世界観にひき込む

「最初の歌詞が印象的だと、その後もスムーズに聴くことが出来る」と、マッキーは番組の中で語っていました。藤原は、まず「自分の曲の世界観」へ引き込むために、色々な仕掛けを施してきているので、この「世界観の提示」がうまい例から。

<歩くのが下手って気付いた>

最新曲。そんなキラキラサウンドなイントロの後に! かなしいこと言わないで!!

<お尋ねします この辺りで ついさっき…>

いきなり“お尋ね”されてしまった。聴く者はたぶん、「何、何」と、まず身構え、この後の唄にも、自然に耳を傾けようとするでしょう。

 <疲れたら ちょっとさ そこに座って話そうか>

ふわっと心に侵入してくる藤原のウィスパーな歌声も相まって、非常に印象的な歌い出し。ここのポイントは、<ちょっとさ>、です。これがあるとないとで没入度がまるで変わります。実際に抜いて読んでみるとよく解りますね。実に何気ない工夫なのですが……。すげえなぁ、どうしたらこんな仕掛けを思いつけるんだろう。天才なのかな?

<健康な体があればいい 大人になって願う事>

アラサー以上の心にまっすぐ届く、「わっかるわぁ~~」という共感の叫びが聞こえてきそうな名フレーズ。「かつてバンプが好きだった元・10代へ」届けるような、この曲を象徴する歌い出し。この時点でリスナーは、いきなりこの曲の味方です。

<寂しがりライオン 吊り橋を渡る>

<週末の大通りを 黒猫が歩く 御自慢の鍵尻尾を水平に 威風堂々と>

どちらも、こういう曲をこれから歌いますまず主人公はこいつです。と1行目から宣言しています。さらにいえばこういう性格です、いまこいつの周囲はこんな状況です……までもがあっという間に説明され、よりリスナーが聴きたい「物語」へと、最短距離で到達するように仕上げられています。そうしてるうちに、主人公が動物だ、という世界観はもうリスナーにすんなり飲み込まれてしまっているのです。まさに電光石火の人物紹介。こうなるともう小説の書きかた講座みたいです。これは歌詞の話です

<冬が寒くって 本当に良かった>

この後に続く歌詞を思い出すと壁を殴りたくなる衝動にかられますが(ウソウソ)、まず「えっ?」と思わせるような歌い出しを、藤原は本当に追及しているのだと思わせられます。何気に、登場人物のセリフになっていることが後でわかる構造なのも見事ですね。


え?何言ってるの??

HAPPY

ひとつ前に続いて、リスナーに「えっ?」と思わせる「歌い出しのインパクト」をさらに追求している例。ここまでくると、冷静に考えれば「何言ってるんだい……」と思わせられるようなフレーズも登場してきます。

<ねぇ 優しさってなんだと思う>

エエッ!急にそんなこと聞かれても……。ドキッとさせるような問いかけ。というか、そもそもリスナーに向けて、いきなり「ねぇ」、って……。そのある種なれなれしい態度が、イヤフォンの近くで囁くような歌声も合いまって、一気にこの曲のリスナーを、藤原のすぐ隣にまで座らせにかかるのです。

<羽根の無い生き物が飛べたのは 羽根が無かったから>

??」「そ、そりゃそうだろうけど?」「……いや、あれ、なんだそれ?」。“例え”にしてはちょっと高度すぎるものを冒頭からぶっ込む藤原節。ところで“藤原節”って、どこかの地方のお囃子にありそうな感じがしませんか? ああそうですか……。この歌い出しは歌声も素晴らしい。ひんやりと冷たく空気が薄い感じで、さながら、成層圏からカメラがスタートするかのようです。

<安心すると 不安になるね>

6文字目で、もう5文字目までを否定しにかかってきやがる! 全く油断ならない!!

<未来の私が笑ってなくても あなたとの今を覚えてて欲しい>

一人称がどれだか判りません。個人的には、ここまでくると少々難しすぎるような気もしますが……。こういう曲って、初めて聴いてから何年も経ったあとで、突然わけもなく歌詞の意味に気づかされたりすることがあります。藤原はそれを、作詞時に「意図的に隠している」「仕掛けている」と発言しています。全部、わざとなのです。

<君に嫌われた君の 沈黙が聴こえた>

「沈黙が、聴こえる」!? この曲では、そんな冒頭のフレーズに一瞬引っかかる余裕すらなく、この後もつづく歌詞と音楽のヴィジュアルがどんどん耳から流し込まれ、聴く者を「バンプの海」にまでダイブさせてゆきます。だからここは、いわば過激な準備運動。プールの授業でまず最初に浴びる、つめたいあのシャワー、みたい。

<君と寂しさは きっと一緒に現れた>

こういう感じにバンプに鍛えられていると、もうこのくらいの「!?」では驚きすら感じずに、ただただ「あぁ~それは切ないなぁ……」と思わせてくれます。バンプのリスナーは往々にしてMです

<僕はかさぶた>

鍛えられていても、やっぱり限度はあるかもしれない。でも、名曲……。


瑞々しくドラマチックなワンフレーズ

ゼロ(通常盤)

もしかすると世間一般の認知としては、むしろこちらかもしれない。未だにサブカルチャーへ多大なインスピレーションを与え続ける、正にバンプ・オブ・チキン的ドラマチズムに溢れた歌い出しを一気にどうぞ。

<人間という仕事を与えられて どれくらいだ>

 「人間という仕事」、ザ・パワーワード。このすぐ後の歌詞も見事です。藤原基央の一種の“辛辣さ”は、このバンドの表向きなキーワードのひとつです。

<迷子の足音消えた 代わりに祈りの唄を
そこで炎になるのだろう 続く者の灯火に>

どっしりとしたサウンド、描かれる重厚なテーマにも負けない、この曲の「ふつうじゃなさ」をしっかりと提示し支える歌い出しです。

<虹を作ってた 手を伸ばしたら 消えてった
ブリキのジョウロをぶらさげて 立ち尽くした 昼下がり>

この目に浮かぶヴィジュアルの瑞々しさよ。これだけで、pixivのランキング上位に行けそうな絵が生まれそうです。「ブリキのジョウロ」という小道具の、清潔でひんやりとした感じ。自分の指でコツンと叩いてもいないのにシズル感すら含ませられています

<月が明かりを忘れた日 冷たいその手をぎゅっとして
地球の影に飛び込んで 見えない笑顔を見ていた>

ああ! バンプって、何てロマンチックなんだろう。一フレーズずつに、藤原の得意で特異な武器がしっかり使われているので、ここだけジンワリ読み込んでみてもよいと思います。自由自在なスケール感、歯の浮くような例えことば。

 <電車の窓は ガタガタ鳴く>

字面ではそれほどインパクトはありませんが、この曲はここの歌声が素晴らしい。か細い、鳴くようなハイトーンで、静謐な雰囲気を見事に演出します。マッキーも言っていましたが、歌詞に加えて歌声もまた歌い出しのインパクトを大きく決めています。これについては曲名も素晴らしく、そんな電車の<窓>が<ガタガタ鳴く>ってどういうこっちゃねん、という、聞こえないはずの音(効果音)にまで一気に想い馳せてしまいます。正にイマジネーションの洪水です。あ、ところでここまで曲名って一切書いてきてないですけど、まったく問題なくついてこれてますよね?


いかがでしたでしょうか? ここまで24曲ほどピックアップしたのですが、まだまだぜんぜん語り尽せていない気持ちでいっぱいです。皆さんにとっての、「 #バンプ歌い出し選手権 」ノミネートはどんな曲ですか? こんな感じに、歌詞もまた、ぜひ味わい深く鑑賞してみると楽しいのではないかと思います。ちなみにバンプサビ前選手権」とか、バンプ最後の2行~4行選手権」とかも同様に開催可能なので、どなたか僕の代わりにやって下さい(他力本願)。

ではまた!


引用は、記事冒頭から順に、友達の唄、オンリー ロンリー グローリー、sailing day、バトルクライ、花の名、morning glow、GO、Opening、メロディーフラッグ、HAPPY、ダンデライオン、K、スノースマイル、ひとりごと、beautiful glider、時空かくれんぼ、pinkie、メーデー、グッドラック、かさぶたぶたぶ、ギルド、ゼロ、ハルジオン、流星群、銀河鉄道(全作詞:藤原基央)。

あまりにも無名な?BUMP OF CHICKENの5つの名曲。

 

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※2016年2月11日 幕張メッセ 駐車場

どうもハローワールド。このブログでは、音楽(特にBUMP OF CHICKEN)にまつわる超ディープな記事をアップしてゆきますので、良ければどうぞお付き合いください。ちなみにTwitter@inuue_nn別館ブログはこちらです。

さっそくの第一弾記事ですが、今回はバンプ・オブ・チキンの、あなたが知らない(無名な)5つの“名曲”について紹介してゆきます。といっても、ディープなファンの方ならひととおり全部*1聴いた事はありそうですので、今回はこの「無名」については、シングル曲ではなく、これまでタイアップもついておらず、MVも作られたことがない曲の中からとし、ディープなファン以外には知られざる5つの名曲について、楽曲のエピソードを交えながらご紹介&解説させて頂きます。

ちなみに各曲の紹介では、YouTubeに投稿されたそれぞれの曲のカヴァー音源を紹介しています*2誰かに歌い継がれてこそ、音楽は生き延びます。ぜひそれぞれのカヴァーも併せてお楽しみくださいね。

 


(please)forgive(アルバム『RAY』収録)

5年間も封印されていた幻の曲! あたたかくて寂しい、藤原詩の真髄。

「(please)forgive」は、アルバム『RAY』に収録されているアルバム曲です。しかしレコーディングはその前のアルバム『COSMONAUT』セッションの際に、既に終わっていました。しかし、CDの収録時間をオーバーしてしまった関係から、たまたま「暗い」という理由でこの曲だけが削られてしまい、2009年の作曲から実に5年間もお蔵入りしてしまった不遇な曲*3です*4

しかし本曲は、その不遇さや知名度に反して、BUMPのキャリア史上屈指といえる名曲の一つです。特に、ある程度年齢を経た方には強く強く響いてくる楽曲だと思います。社会の理不尽を経験し、10代の頃のような「元気」も尽きてしまい、生活への劇的な変化を期待しなくなった……。それでもどこか、いまの生活に不満を、変化を求めてしまう私たちの心に、「それでいいのだ」と藤原は優しく歌いかけます。それも含めて、あなたは今も選び続けているんだ……というのが「(please)forgive」なのです。それはまるで、BUMP OF CHICKEN史上に燦然と輝く傑作「ロストマン」の、そのドラマチックさに年齢を感じてしまうようになった……アラサーな人々への、次の1曲を用意してくれたかのように。(please)forgive=どうか許してくださいと問いかける相手は、もしかすると過去の自分自身なのかもしれません。

この曲は、藤原が生涯敬愛しているマイケル・ジャクソンに捧げたとされる作品*5でもあります。生まれて初めての海外旅行で、フランスとアイルランドに滞在した藤原。その着陸した先のシャルル・ド・ゴール空港(フランス)で、藤原は当時亡くなったばかりだったマイケル・ジャクソンの楽曲を耳にします。その時の体験から、「(please)forgive」が誕生したとか。様々な人々がそれぞれの生活に向かって、目的地まで飛んでゆく「空港」という場所、そして亡くなってしまった生涯最愛のアーティスト……。そのエピソードも踏まえると、また違う景色が見えてくる楽曲かもしれません。

カヴァーはYouTubeより、一瀬さんの音源をチョイス。女性がカヴァーするとグッと魅力がのも、藤原楽曲のおいしいところですよね。今回は紹介していませんが、アルバム『ユグドラシル』収録の「embrace」とかも、JUJUのようなシンガーがカヴァーするときっといいと思うのです……。

オリジナルはこちらから。

(Please) Forgive

(Please) Forgive

 


ディアマン(シングル『グッドラック』収録)

藤原ワールド真骨頂!BUMP OF CHICKENのカッコ良さを100%体現する、あまりにも無名なカップリングの名曲。

BUMP OF CHICKENのメンバーである増川弘明はなかなか面白い人で、ラジオやMCでの数々のトボけた発言は勿論のこと、「あなたバンプのメンバーでしょうが!」って突っ込みたくなるようなことも時々話していたりします。たぶん彼は他のメンバー以上に、素でただの(我々と同じ)バンプリスナーに戻ってしまう瞬間があるのでしょう。で、増川はシングル『グッドラック』発売時のインタビューで、カップリングであるこの「ディアマン」について、「この曲は僕が思う究極のカッコよさに最も近い」と発言しています。

まさに、その通り。この曲ほど藤原楽曲のカッコ良さを凝縮したものは他にありません。全編藤原の弾き語りで展開しており、これまで節々でしか聴けなかった「藤原っぽい」歌いまわしを、これでもか! と詰め込んでくれていますし、歌詞もどこまでもひとりよがりで、寂しく、孤独にあふれたものばかり。そして間奏では、BUMP OF CHICKENのデビューシングル「ダイヤモンド」のフレーズまでもが引用されているのです。曲名の由来は、Diamont(ダイヤモンド)のフランス語読み「ディアマン」と、「ディアー・マン(親愛なるあなたへ)」のダブル・ミーニングでしょうか?

しかしながら、カップリング曲であること、あまりにも地味な曲であること、ライブでも披露されたことがないことから、おそらくバンプの中でも一番埋もれている曲*6ではないでしょうか。個人的には、アンコール待ちでこの曲の1番を全員で熱唱したらメンバーが楽屋で泣き崩れると思うので、一度でよいので実現させてみたい次第です(でも「supernova」のほうが歌いやすいよね……)。

カヴァーはYouTubeより、上原遼さんの動画をセレクト。MCの感じから既に「ディアマン」の世界っぽい上に、すごいタイミングで学校のチャイムが鳴るというミラクルが起きているので、ぜひ一度ご鑑賞ください。このチャイム……めちゃくちゃ泣けます。

 オリジナルはこちらから。

ディアマン

ディアマン

 


66号線(アルバム『COSMONAUT』収録)

シングルにならなかった! バンプ史上最高のラブソング。

「甘々のラブソングは書かない」硬派なイメージで、10代・20代ハートを掴みまくったBUMP OF CHICKEN。「天体観測」は「ラブソングじゃなくて雨の唄だ!」と言ってしまいそうになるこじらせバンプファンの皆さんも、おそらくこの曲には撃ち抜かれてしまったはず。先日TBS日曜劇場『仰げば尊し』のTVCMで流され*7話題となりました。そのド直球さはインディーズ時代の「リリィ」以来? そして先日の20周年記念ライブ「20」でも演奏された、BUMP OF CHIKEN史上最高のラブソングがこの「66号線」です。

BUMP OF CHICKENにデビューから長らく連れ添っているプロデューサー、MORの森徹也氏に贈られたとされる*8この曲は、しかし恋の唄・愛の唄として聴いてみても、十分すぎるほどのインパクトがあります。美しいメロディや印象的なイントロもさることながら、特に素晴らしいのが歌詞です! 特に、<僕にだってきっとあなたを救える 今でも好きだと言ってくれますか>というキラーフレーズ!!

アルバム『COSMONAUT』は、「あなたの助けに僕はなれない、それでも一緒に居させてくれないだろうか?」というメッセージが数多く描かれています*9。その中で、この曲だけがあなたの助けに僕はなれる!」と、より踏み込んで明言しているのです。本当に、この曲だけです。シニカルな言葉の上に積み重ねられた、強くまっすぐな「あなた」への想いが、胸に飛び込んでくるような作品です。

BUMP OF CHICKENのアルバム曲から、1曲だけシングルにできた曲を選ぶとすれば、どれだと思う? ……と聞けば、たぶんファンから様々な答えが返って来ると思います。そして私ならば、完成度の高さ、そしてキャッチーさの両面から言っても、迷わずこの曲を挙げるでしょう。「天体観測」「スノースマイル」に並ぶポテンシャルを秘めた「66号線」、ぜひ何らかの力でメジャーにしたい所です。

カヴァーはYouTubeより、inu3saru3kiji3さんの動画をセレクト。ちなみに、筆者が参加したGGT*10でこの曲が演奏された際、おそらく付き合いたてと思われるカップルがすぐ前でライブを鑑賞していたのですが、この曲の後、すぐに二人で見つめ合って……。「いい曲だったね」「いい曲だったねぇ……」って言い合ってたのが、なんだかすごく良かったというか……。やはり、そういう目に見えない力がある曲なのだな、思います。

オリジナルはこちらから。

66号線

66号線


バトルクライ(シングル『LAMP』収録)

「20」でも披露された!『FLAME VEIN』の最高到達点。

荒々しい10代のエネルギーが詰め込まれた、千葉・佐倉の最初期~下北沢時代を彩るインディーズ楽曲の数々。「ガラスのブルース」「くだらない唄」「リトルブレイバー」「ナイフ」……それらが、ファーストアルバム『FLAME VEIN』に結実しています。一方、『FLAME VEIN』期の楽曲は数が少なく*11、また多くが音源化されていないため、思えば貴重なシーズンだったとも言えます。そんなインディーズ期の集大成と言える曲が、この「バトルクライ」です

最近書かれたレビュー記事でも誤認されていましたが*12、「バトルクライ」は『FLAME VEIN』収録曲ではありません。『FLAME VEIN』から約8か月後、BUMP OF CHICKEN初のシングルである『LAMP』のためにレコーディングされたカップリング曲でした。A面である「ランプ」が次の『THE LIVING DEAD』に収録されていることからも、「バトルクライ」が事実上、バンプの下北沢時代・最後の曲であったと言えるでしょう*13。『LAMP』廃盤時に、「バトルクライ」は『THE LIVING DEAD』ではなく『FLAME VEIN』に転載収録されたことも、それを物語っています。

この曲には、『FLAME VEIN』の全てが詰まっています。「想像の中で」なら最強になれる! と歌い上げる力強い言葉たち、そしてヒリヒリするような轟音のバンド・アンサンブル。ストレートでがむしゃらな音楽のパワーは、今聴いても色褪せないものがあります。「バトルクライ」は現在でもライブで比較的頻繁に演奏される「下北沢時代」の楽曲です。不安や迷いを吹き飛ばすように、まるで自分自身を勇気づけるように演奏されるその姿は、いつ観ても、あの頃の青々としたメンバー4人といまこの現在が、陸続きであることを証明しているかのようです。

「K」誕生の前夜、「天体観測」よりも「ray」よりも遥か以前……。「バトルクライ」は、10代のバンプをそのまま封じ込めたような唯一無二の名曲です。

カヴァーはYouTubeより、たもさんのバンドによる動画をチョイス。地元の秋祭りで披露されたというライブ映像ですが、その荒々しい演奏の様子、そしておそらく現地ではけっこう轟音であろう雰囲気、そして途中でカメラがコケるところ(笑)も含めて、「“バトルクライ”の時代のバンプ」と、どこかシンクロする所があるような気もしますね。

オリジナルはこちらから。

バトルクライ

バトルクライ

 


arrows(アルバム『orbital period』収録)

時空を越えた壮大な「旅の終わり」、大作『orbital period』を締めくくる名曲。

2003年。当時のバンプの全てを結集させた傑作ロストマンのシングルが発売し、その「ロストマン」を最終曲に収録したアルバム『ユグドラシル』のリリースを最後に、BUMP OF CHICKENは大きな方向転換を遂げます。「歩み続ける孤独と勇気」を描いていた初期から、掛け替えの無い『あなた』との関係性」を描く、穏やかな歌詞、そして音楽へとシフトしたのです。この傾向は、両者の要素が再び激突する2つ目の傑作「ゼロ」の発表まで続くわけですが、こうした一連の変化は、少なからずバンドにも、そしてファンにも影響を及ぼしました。『ユグドラシル』から大きな音像の変化を遂げた「プラネタリウム」のリリース、ライブで観客の合唱を想定した「supernova」の発表……。「supernova」のPVは、六本木ヒルズアリーナにファンを無料招待して収録されましたが、その頃バンプのライブで観客全員が同じように手を振るということがなかったため、今見てもかなりぎこちない映像になっているのは、とても貴重な記録だと思います。

それもこれも、鹿野淳曰く「いつかこんな曲を書いてくれるのではないか? と思っていた」最高傑作、「ロストマン」がリリースされたから。あのMr.Children桜井和寿が「2000年代で最も印象的だった曲」と評すその内容は、インディーズ時代から続くBUMP OF CHICKENというバンドそのものを凝縮した、正に集大成と言えるものでした。そんなロストマン」の、まるで続きから始まるように描かれているのが、この「arrows」なのです。

<大長編の探検ごっこ 落書き地図の上/迷子は迷子と出会った 不燃物置き場の前>という一節から始まる歌詞。言うまでもなく「迷子」は英語で"ロストマン"。<手作りの地図>と<落書き地図>は、もはやほとんど同じ意味でしょう。「ロストマン」が過去の自分との永別を歌ったものだとしたら、「arrows」はその先、「一人きりの旅路の途中で、同じような境遇の別の誰かに出会う」という曲です。描かれているのは、眼下に広がる壮大な風景、長い長い旅路、そして寄り添い合う、失った者同士の多くを語らない心の交流――。“ロストマン”同士のふたりが、最後に手に入れたものとは何だったのか? かけがえのない『あなた』との関係を描き出そうとする、第二期BUMP OF CHICKENをはっきり示した大作『orbital period』を締めくくるにふさわしい、本当に素晴らしい曲だと思います*14

 カヴァーはYouTubeより、Charlotte Chengさんのパフォーマンスをチョイス。日本語がネイティヴでないシンガーにも多数コピーされているBUMP OF CHICKENなぜか「arrows」は外人さんカヴァーが多いような気がしますが、こちらはまさかの英語字幕付きで楽しむことが出来ます。Charlotte Chengさんの儚い歌声もキュンと来ますし、時々挟まれる口笛も、世界観に合っていて素晴らしいですね。

オリジナルはこちらから。

arrows

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いかがでしたか?もし興味のある楽曲がありましたら、CDやiTunesなどからぜひ本家の音源にも触れてみてくださいね。というか全部知ってるけどね、という方も、ぜひこんな感じに色々理由をつけたりして、あなただけの「隠れた名曲」を探してみてはいかがでしょうか。

ではまた!

 

*1:2016年8月末時点で、公式発表115曲(隠しトラック含まず)。

*2:原盤の違法アップを紹介するはあまり好きではない……。

*3:詳しくはこちらのインタビュー記事を参照

*4:さらにその際、レコーディングに立ち会っていた音楽ライターの鹿野淳氏が「今度のアルバムに収録される「(please)forgive」という曲は素晴らしい!」と雑誌で先行して書いてしまっていたために、長らくウソツキ扱いされるトバッチリを食うはめになったりと、何だか色々とエピソードがある楽曲。

*5:ちなみに藤原から明言はされていないが、アルバム『COSMONAUT』収録「angel fall」も、マイケルを題材にした曲と思われる。

*6:これか「ほんとのほんと」(シングル『firefly』収録)かな……。

*7:しかし本編では使われず=タイアップはつかず。

*8:DVD『人形劇ギルド』リリース時のインタビューで、メンバーは作中に登場する「66ギルド」の由来を「ディレクター(当時の言い方、現在はメンバーもプロデューサーと呼んでいる)のラッキーナンバーからとった」と明言している。

*9:R.I.P.」「ウェザーリポート」「宇宙飛行士の手紙」etc...。

*10:「GOLD GLIDER TOUR」(2012年開催のライブツアー)。

*11:その翌年には『THE LIVING DEAD』という、『FLAME VEIN』とはやや方向性の異なるアルバムが生まれているため。

*12:この記事

*13:厳密には『THE LIVING DEAD』収録の「グロリアスレボリューション」が『FLAME VEIN』よりも以前に作られた曲のリテイク。ただしその時点でほぼ完成済みだった。

*14:個人的に「涙のふるさと」は、アンコール、という感じがするのである。