地球飛行士からの手紙

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完全ガイド!BUMPのライブDVD、お薦めはコレだ。【2017年版】

BUMP OF CHICKEN 結成20周年記念Special Live 「20」 (通常盤)[Blu-ray]

へなちょこバンドのライブを観よう!

BUMP OF CHICKENの、「SURF PORKIN'」以来16年ぶりとなる非レコ発ツアー「PATHFINDER」がいよいよ2017年9月16日からスタートします。配信リリースは続いたものの、基本的にアルバムを挟んでいない超久々の大型ツアーということもあり、否応なくその内容へ期待が高まります。毎回欠かさず参戦しているという方も、これが初めてのライブになる方も、久々のバンプになりそうな方も、今のところチケットが取れていなくて追加公演に賭けている方も……予襲・復襲をかねて(申し訳ございません、ただいま誤字がありました)、過去のバンプのライブ映像を観ておきたい! という気持ちが高まっているのではないでしょうか。

もともとは、ライブDVDを一切発表してこなかったBUMP OF CHICKEN。そう考えれば、最近の主要な公演はおおむね商品化されるようになりましたので、かなり幸福な状況だと言えますよね。一方で、既に4枚ものライブDVDがリリースされており、お値段もアルバムと比べればかなり高め……というかレンタルもされていない……ということで、実はアルバム以上にどれにしようか選びづらいのが、ライブ映像作品なのではないでしょうか?

そこで今回は、2017年8月現在で発売されているBUMP OF CHICKENのライブ映像4作品+アルバム特典の2本を全レヴュー! それぞれの立場の方にもお勧めしやすい内容に仕上げてみました。どうぞ最後までお付き合い頂ければ幸いです。ちなみに、タイトル横に書いた「おすすめ度」を表す星の数4つが最高値です。なんで5つでなく4つか? 野暮なことを聞くなっ!

 


既にファンなら『結成20周年記念 Special Live「20」』一択! ★★★★


 あなたが既にBUMP OF CHICKENのファンで、もしくは『THE LIVING DEAD』や『jupiter』や『ユグドラシル』まではファンだった、という方ならば……問答無用でこの『20』をオススメします。ぶっちゃけこれ一択です。これだけ買えば絶対に大丈夫です。下の説明も読まずにカートに放り込んで頂いて全く問題なし。それくらいのオススメ度マックスな商品が、この『20』なのです。

とにかく、セットリストがすごい! 結成20周年記念日にたった一公演だけ、しかもキャパ1万5000人という(近年としては)小規模で行われた地元・幕張メッセでのライブは、終演直後からファンの間で大きすぎるほどの話題になりました。メンバー4人だけでじっくり決めたというセットリストは、新旧を見事に織り交ぜ、実に10年ぶりの演奏となるレア楽曲も多数含め、さらにはライブ初披露となる昔の楽曲、ダメ押しでCDにすらなっていない初期の超レア曲まで披露された、豪華極まりない内容でした。その上、どの楽曲もパフォーマンスが本当に素晴らしい! たった一公演だけだったこともありますが、他の映像作品と比較してもライブ演奏が際立っています。ほとんどの楽曲が、ベストテイクといってよい内容になっているのです。

さらに、ライブ上の演出が「最小限」なのもポイント。近年のバンプのライブは、スクリーン映像や光る腕輪「PIXMOB」、巨大ボールに花火など、音楽以外の要素もかなり派手に織り交ぜたものとなっています。しかしこのライブではそれらが排除されており、まるで初期の頃の、同期SEもほとんどない(あるにはありますが)純粋なライブサウンドのみを楽しむことが出来るのです*1

後述しますがバンプというバンドは、「メンバーよりもお客さん、メンバーよりも音楽そのものを」大事にするという、強い哲学を持っている共同体です。しかしこの商品だけは、「20周年のお祝いだから!」ということで、ライブの主役は「お客さん」ではなく、明確に「メンバーの4人」に絞られています。だから、藤原・増川・直井・升のかっこいいライブパフォーマンスをじっくりと楽しめるアングルが多数織り交ぜてあるのです。いたせりつくせりとは、正にこのことでしょう!


 さらに言えば、これから紹介するDVDよりもお値段が「安い」。おまけ映像も最小限で、ジャケットも通常盤は非常にシンプルです。5000円を切る最安値で購入できるバンプのライブ映像作品なのです。……逆に言えば、これより先の商品よりも「こだわりが少ない」DVDだと言えるでしょう。というより、商品としてこだわる必要があまりなかったのです。何しろライブそのものが、非常にメモリアルだったのですから。

とにかく、バンプが好きな方も、「昔のバンプ」が好きだった方も、この商品だけはマスト! あの頃、本当に見たかったバンプのライブがここにあります。演奏も技術も歌もずっと上手くなっています。感動的なほどにです!

あえて言えば、結成してから最初の10年のころのマニアックな「アルバム曲」が多いので、本当にファンに「なりたて」の方、まだアルバムを全部聴いたことがない方にとっては、やや馴染みの薄い曲が多いことも事実でしょう。さらに、その特殊性からいって、「これからバンプのライブを生で見る予習にしたい」という方にも、あまり適当なものとはいえません。ファン歴の浅い方は、もうちょっと後にとっておいたほうがいい商品かも。そんな場合は、次に紹介する『BFLY』をお勧めします。

  • とにかくセットリストがすごい!ここでしか聴けない曲満載
  • シンプルなライブとライブ映像
  • MCが多い…メンバーが主役の演出!
  • 新規ファンの方にはちょっとマニアックすぎるかも…

ド派手!ベストヒットセトリ!『STADIUM TOUR 2016 "BFLY" NISSAN STADIUM 2016/7/16,17』 ★★★


 2016年7月に開催された、バンプ日産スタジアムでの二日間のライブは、バンド結成史上最大規模のものであり、また事実上、これ以上のサイズのライブは今後も行われないであろうと思われるものでした*2。さすがにサイズが大きかったのでチケットが取りやすかったこともあり、この日が「初・バンプライブ」であった観客も多かったのではないでしょうか。

ですから、最近ファンになった方にとって、この公演を収めたライブ映像『BFLY』は、正に入門盤にふさわしいと言えます。

まずは充実したセットリスト! この5か月前に行われたレア曲多数の『20』と双璧をなすように、『BFLY』ではこれまでの「ライブ定番曲」を一斉におさらいするような「ベストヒット」楽曲がずらりと並びました。例えばベスト盤や最新アルバム『Butterflies』を聴いたばかりのファンや、NHKの『SONGS』で初めて動くバンプを観た……という方にとっては、聴きたい曲がいきなりほとんど聴けるような嬉しい内容になっています。新旧を織り交ぜ、ライブ時点での直近のタイアップソングもおおむね網羅されています。長年演奏されている楽曲は特に素晴らしいパフォーマンスで、正に盤石といった感じ。最近ファンになりました! という方の期待に十分応える、最大公約数的なライブ内容だと言えるでしょう。


 そしてもう一つの目玉は、「目で観て楽しい」ド派手なライブ演出の数々!リッチなバック映像、スタンディングエリアに投入される巨大ボール、そして日が暮れると……美しく輝くPIXMOB*3、華やかに輝く最新の照明技術、惜しげもなく投入される紙ふぶき、そして花火! ひとつ前のツアーから導入された大規模な演出の数々がさらに洗練され、演奏と一緒に躍動する様子には否応なく興奮させられます。特に後半のライブ映像は本当に美しい! これだけでMVのような「虹を待つ人」、そして驚きの演出が加わった「Butterfly」には思わず感激させられてしまいます。メンバーも最後の方のパフォーマンスでは終始楽し気で、ファンとメンバーの心が一体化したような感動が訪れることでしょう。

惜しむらくは、会場が巨大すぎて音質がやや籠ったような印象があること。演奏自体に遜色はありませんが、ガツンとロックサウンドを楽しめるミックスには残念ながらなっていません。また「バンプのライブ」を比較的経験されている方にとっては、セットリストの面でも演出の面でもかなり既視感があり、物足りないと感じるかもしれません。ただ、そういう方には『20』があるし、『BFLY』のライブ後半には「まさか!」のサプライズアレンジも聴けたりするので、やはりこちらもチェックしておいていいんじゃないかな? と思います。

新規ファンの方にも、そしてこれから初参戦するライブの予習にもばっちり! 『BFLY』は、皆さんの「最初の1枚」のために用意されたような映像作品です。

  • とにかくド派手!バンプ史上最大規模のライブ
  • 「ヒットメドレー」といえる充実のセットリスト
  • 最新のツアーなので、ライブの予習にもぴったり
  • 熱烈ファンにはちょっと物足りないかも…

バンプの「ライブ哲学」に感動!『GOLD GLIDER TOUR 2012』 ★★★★


 もともと『GOLD GLIDER TOUR 2012』は、これまで頑なに「ライブDVD」のリリースを拒絶してきたバンドが、満を持してリリースした商品でした。初めてこれを観終えた時の、深い感動を今も良く覚えています。ここには、並々ならぬ「バンプ的哲学」が反映されていたからです

オープニングから高らかに鳴り響くモーリス・ラヴェルの「ボレロ*4、まるで観客の一人になったような凝ったカメラワーク、そして幸せそうな観客の表情。メンバー姿がはっきりと映されるのは、再生してようやく14分を過ぎた頃からです。ライブの主役は「音楽」であり、そして「お客さん」である……メンバーの細やかな表情も映されますが、決してアイドルのライブ映像にはなっていない。MCの収録も最小限です。当時最新アルバムだった『COSMONAUT』の世界観を反映させた、メンバーと音楽、そして観客との暖かなアンサンブルがこのDVDには刻まれています。これこそが「バンプ」の哲学、「バンプ」の世界観なのです。『GOLD GLIDER TOUR 2012』は、まさにそれを体現した映像作品といえるでしょう。

他のライブ映像と比べて、カントリー調のアレンジが多いのも嬉しいポイントです。ピコピコ系の電子音とも、荒々しいバンドサウンドとも実は違う、藤原の、そしてBUMP OF CHICKENの大きな要素。今後のディスコグラフィー的にも、ここは少し特徴となってゆくのではないでしょうか。藤原のフォーキーなアドリブ演奏が楽しめる(たまらない!)「beautiful glider」は特に素晴らしいです。私は『COSMONAUT』がとても好きなアルバムなので、やはりここがちょっとひいき目になります。このアルバムが好きな方にとっては、マストといってよい商品でしょう。


そして何よりも素晴らしいのが、「お客さん一人一人に届けることこそが『ライブ』だ」と公言するこのバンドが、「ライブDVD」もまた形を変えたひとつの「ライブ」なのだ、と明確に意思表示をした「最後の仕掛け」です。ここが凄いのです……ぜひ最後までご覧ください。残念ながらこの演出は恒例化しなかったため、今となってはちょっと貴重なものかもしれません。しかしこの「最後の仕掛け」には、他のバンドにはないほどの、強い強いひとつの意志が感じられるのです。初回盤にはこれに加えて、さらに「紙ふぶき」の演出もあったんですよね……ああ、また文章が長くなってしまう……。

暖かなアンサンブルと『COSMONAUT』好きにはたまらない、バンプってこういうバンドだよ」と、これ1枚で説明出来るような、非常に丁寧な映像作品です。とても、おすすめ!

  •  観客中心の、バンプの暖かな「ライブ」哲学を堪能!
  • 最も丁寧に作られたライブ映像作品
  • フォーク&カントリーな『COSMONAUT』好きには必見!
  • 前の二つよりはお値段が少し高いかも?
BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012(初回限定盤) [Blu-ray]

BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012(初回限定盤) [Blu-ray]

 
BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012(BD)<通常盤> [Blu-ray]
 

コレクターアイテム感の強い『WILLPOLIS 2014』 ★★


 2013年から2014年にかけて、BUMP OF CHICKENは、非常に大きな変化と挑戦を強いられる(自らに強いる)こととなりました。それは、『COSMONAUT』で確立した「自分たちのペースを保っている、ちょっと大人なアンサンブル・バンド」から再び、激しく移り変わる音楽業界のメインストリームに引き戻されるような、極めて熾烈なものでした。初のベスト・アルバムリリース、地元の野球場を借り切ったスタジアム・ライブ、ベスト盤ツアーから息も切らせずにリリースした(非常に攻めの)ニューアルバム、スタッフサイドから提案されたヴォーカロイドとのコラボレーション、現在も続く新しい映像ディレクターとの仕事、フロントマン突然の入院、海外公演、そして初の東京ドーム公演……。

『WILLPOLIS2014』は、この「激しい季節」を生き抜いたバンプの様子を切り取ったドキュメンタリー・ビデオです。『RAY』レコ発ツアーのライブ映像に、メンバーの個別インタビューや、会場に集ったファンへのインタビュー、そして会場の外の光景などが挟まれてゆきます。まるで難破船の中のように、「勇気はもうからっぽだ」とつぶやくメンバー。一方、会場の外でギター片手に「(please)forgive」を口ずさんでいる柔らかな表情のファン。それぞれの「勇気」が集い、ひとつのライブへと向かって行く様子が描かれます。私はこのファンが登場するパートがとても好きで、ああ、2014年って、こういうふうに「ライブ」を人々は鑑賞していたんだなぁ、と、きっと何十年経っても振り返ることが出来るのだと思うと、胸がいっぱいになって、たまらなくなります。この穏やかな表情、そして笑顔でライブを鑑賞するファンたちは、バンプが長い時間をかけて「作ってきた」ものだからです。一方、猛烈な時期の渦中にあるメンバーの(かなり長い尺の)インタビュー映像には、すこし胸が苦しくなるものがあることも事実です。

映像の中心となっている、初の東京ドーム公演は臨場感もあり、演出も非常に派手です。また大きなセールスを記録した『RAY』の収録曲をたっぷり聴くことができるのも、大きな魅力でしょう。しかしそもそも派手な演出で「映像としても楽しめる」といえば最新の『BFLY』があるので、立ち位置的に少々取り残されてしまった感じがあります。ライブ映像の合間にファンやメンバーのドキュメンタリーが挟まれるので、会場の臨場感にも欠けます。サプライズだった台湾公演の貴重な映像では、当時レア曲だった「ランプ」の演奏を聴けたりもするのですが、これは後の『20』でも聴けるようになってしまったので、ちょっと貴重度がダウンしてしまいました。また本作の目玉である、初音ミクとのライブ共演映像「ray」は、メンバー4人とヴァーチャル・シンガーがまったく並列にスクリーンに映し出される……とても胸熱で魅力的な、素晴らしいものになっています。なっているのですが、しかしこれも今となっては、YouTubeのオフィシャルチャンネルで見れちゃったりするんですよね……。


『RAY』収録楽曲を聴きたいなら、間違いなくこの1枚をお勧めしますしかし以上のような事情から、他のバンプの「ライブ映像作品」とは少し違った毛色をもつ商品になっていることも事実です。これからライブDVDを集めるのならば、もしかすると、最後に買ってもいい商品かもしれませんね。

  • ドキュメンタリー映画風の異色作
  • 『RAY』楽曲のライブを聴きたいならこれ!
  • 派手なのが見たければ『BFLY』なのでちょっと取り残された感…
  • 初音ミクとの「ray」はYouTubeで観られます!

音質良し!渋いライブ『Special Live 2015 at Yokohama Arena』 ★★★

Butterflies(初回限定盤)(Blu-ray付)

アルバム『Butterflies』の初回限定盤に収録されているライブ映像作品。2015年夏に行われた横浜アリーナでのライブが全編収められています。

ちょうどアルバムリリースの狭間に開催されたこともあり、セットリストがやや特殊なのが特徴です。特に、当時のライブが商品化されていない名盤『ユグドラシル』や『orbital period』収録曲が多く演奏されているのが嬉しいところ。あの「太陽」や「embrace」までもが見事なライブ演奏で楽しむことが出来ます*5。さらにサウンドのミックスがラウド寄りなので、特にこういうサウンドが好きな人にはたまりません。派手なライブ演出も少なく、また「天体観測」が演奏されていない珍しいライブなので、全体的に渋めの内容になっていると言えるでしょう。

Butterflies(初回限定盤)(DVD付)

Butterflies(初回限定盤)(DVD付)

 
Butterflies(初回限定盤)(Blu-ray付)

Butterflies(初回限定盤)(Blu-ray付)

 

残っていればオススメ!『2013.8.9 Live at QVC Marine Field』 ★★★

RAY(初回限定盤)(予約特典ステッカー無し)

アルバム『RAY』の初回限定盤に収録されているライブ映像作品。2013年夏に行われた千葉・QVCマリンフィールドでの野外ライブが全編収められています。

ベストアルバム発売記念に、地元千葉では最大規模のライブ会場が押さえられ実施されたメモリアルなライブ。チケット価格も格安で、当日はYouTubeで全編が無料生中継されたこともあり、かなりファンへのサーヴィスという趣旨が感じられる公演になっています。また、現在に続く「派手な」演出のライブが始まった、最初の公演でもあります。

このビデオが素晴らしいのが、野外公演としては音質がいいことです。特に、ここでしか聴けない「花の名」*6正にベストテイクと言ってよい内容!60分を切る短めの映像ですが、充実したライブパフォーマンスを楽しむことが出来ます。2017年現在で『RAY』の初回盤を入手するのはやや困難だと思いますが、見かけたらぜひ手に取ってみてくださいね。


 

いかがでしたか? 常に前に進み、ファンを魅了し続けるBUMP OF CHICKENのライブ、そしてライブ映像。気になるものがありましたら、是非お手に取ってみて下さいね。そして幸運にもチケットが取れたならば……次は、ツアー「PATHFINDER」の途上でお会いしましょう!

↑ええ曲や……。

*1:照明のみ、最先端の技術が取り入れられています。

*2:日産スタジアムが2017年現在で、ライブ実施が可能な日本最大規模の会場である(キャパ約7万人)ことから

*3:観客に配布される「光る腕輪」。

*4:しかも世界最高の指揮者の一人だったヘルヴェルト・フォン・カラヤンベルリン・フィルハーモニー交響楽団の黄金コンビによる音源!

*5:さらに「embrace」では、初公開当時の貴重な歌詞替えが再現されています!

*6:バンプの代表曲のひとつですが、実は商品化されているライブではここでしか演奏されていない……。